世界の状況を簡単に整理してみたいとおもいます。
封じ込め国、蔓延国、日本。この3つについて、現況と、今後について論じます。つらつらと現時点で思っていることを書きましたが、ご意見・ご感想は歓迎します。
※6/9追記しました
封じ込め国の今後
まず封じ込め国です。台湾、ベトナム、香港、マカオ、ニュージーランドは封じ込めに成功しました。これらの国では暫くの間、感染者がでていません。ベトナムはすでに50日?以上出ておらず、正確な数字もわすれました。というか気にしなくなるくらい、もうコロナは遠い昔の話になりました。ベトナムなどは知る限り、早期に封じ込めたために、国民に給付金などもしておらず、其の当たりの財政コストはまったくやすかったようにおもいます。
次に、アイスランド、タイ、オーストラリア、中国、韓国などの準封じ込め国があります。これらは、1桁ないしはそれの準ずる感染者であって、また感染者の絶対値ということよりも、検査・追跡・隔離体制がととのっており、それらの能力の範囲に感染者が収まっているということです。つまり感染者一人ひとりを把握し、追うことができており、完全にコントロールできている国です。こうした国はここに上げたほかにも私がしらないだけで、いくつかまだ有ると思います。
※ベトナムのケース。4月の半ばから新規市中感染者はでていない。直近グラフの感染者は在外ベトナム人の帰国時に感染者が国境で検知されて隔離されているもの。
このように「感染者<検査・追跡・隔離の能力」の方程式を満たしている国は、定義上グリーン国として扱います。
さて、こうした国においては、課題はシンプルです。まずすでに国内旅行や国内の飲食といったものは復活しています。国内経済の多くが正常にもどってきております。そのまま普通の生活をすればよいでしょう。良くも悪くも密な状態を避けることなく、普通に生活ができています。ベトナムは国内のサッカーリーグも再開しました。
唯一の課題は、国境をどのように開放していくかということに尽きますが、これはいわゆるグリーン・ゾーン協定(トラベルバブル)が私の予言どおりに形成されようとしています。ここで注意してほしいのは、完全にゼロになった国だけでなく、「感染者<検査・追跡・隔離の能力」の方程式を満たしている国も、グリーン・ゾーンの仲間に入れてもらえるということです。感染者が把握され、迅速に追跡・隔離できるようになっていれば、必ずしもゼロである必要はありません。グリーン判定で、重要なのは、感染経路を追えない感染者がゼロかどうかと言う点です。世間では完全ゼロにしなければグリーンでなく、そんな国は極少数にとどまるとの批判がありますが、的外れです。
(※現在の日本は、感染者の絶対数は少なくなっているものの、経路不明の感染者が半数近くをしめており、市中感染が制御できたとは言えません)
さて、トラベルバブルが形成されると、まずはビジネスマンの行き来から再開されるでしょう。とりわけ、現地法人の経営者などは、行動の範囲を予めきめておく(社内と、自宅にしか行かない)といった取り決めで、早期に14日間の隔離義務を免除することが可能かもしれません。
インバウンド・観光は、まだまだむずかしいですが、完全なパッケージツアー(北朝鮮観光のように完全に行動予定が把握され自由がない)という形で、再開がされる可能性はあります。
さて、いずれにしても、グリーン国は、焦ることはありません。国内経済はもうフル稼働にちかくV字回復を見せている上に、国際的な行き来にかんしても徐々に始めることができているからです。命も、経済も、うまく守ったということです。
後述しますが、今後、ワクチン、自然免疫、その他のファクターXにより、コロナが全世界的に終息したり、たいした病気でなくなったりすることもありえます。グリーン国は、事態の推移を傍からみているだけでよいです。封じ込め政策を変える必要は微塵もありません。世界が解決をみるまで待つということでよく、実に気楽で、お得な立場といえましょう。グリーン国は、豊富なオプションがあるのです。
感染蔓延国の今後
次に、いわゆる感染蔓延国、レッドゾーンについて話します。
イタリア、スペイン、英国、アメリカを筆頭に多数の国があげられます。これらの国は感染を制御できておらず、一時的におおきなロックダウンというハンマーを下しましたが、その後経済を徐々に回復させるにつれて、グダグダになっています。アメリカや英国では、ご存知の通り、黒人差別へのデモがすごいことになっており、密どころではない密が形成されているのはお分かりでしょう。
こうした国ですが、あんまりなにかできるかというと出来なそうです。もう何かできるオプションがすくないのですが、データをみると不思議なことが起きているようです。
次はイタリアの例ですが、経済を再開したにもかかわらず、日に日に感染者がへっていて、ついには200を切る日もでてきました。
フランス、スペイン、ドイツなども、同様の傾向です。いったいこれがどうしてなのかは、さっぱりわかりません。コロナが弱体化したのか、何故か集団免疫に達したのか、わけわかりませんが、わからない何か、つまりファクターXが働いているようです。もしかしたら、このまま終息してしまうかもしれません。
(※よく言われているBCGではなさそうです。イタリア等は非接種国ですので)
レッドゾーンの政策は、神頼みです。神頼みで、ファクターXによって終息すれば、神が見捨てることがなかったということです。
そして、人間ができることといえば、ワクチンを最速で開発することです。レッドゾーンの出口は、神と、ワクチンしかありません。
さて、其の中で不思議なのがスウェーデンです。スウェーデンは、世界で唯一集団免疫をめざすとして、ロックダウンをせず、適度に放置するという政策です。となれば、他国より先行していそうなもので、先駆けて終息してもよさそうですが、現実の傾向は横ばいで、感染者数の絶対値でもイタリア・フランス・スペインを超えてしまいました。
とにかくコロナの挙動には、不思議なことがありすぎます。素人もプロも全員が謙虚になるべきでしょう。
私は兼ねて一貫して、素人が、コロナそのものの医学的・免疫学な性質を独自研究してもしかたないと言ってきました。こうした不思議を目の当たりにして、私は其の思いを更に強くしています。ツイッターの一部の人のなかには、自分こそが科学者であるような態度で、断定で医学的側面を語り、政府や専門家を素人呼ばわりしたり、中傷するようなことをしているひとが多く目につきます。私には理解できない人々です。
日本の観察
さて、日本は、封じ込め政策を採用しなかったが、感染も爆発していないというどっちつかずの状態です。実に日本らしい、中間地点をさまよっている。
日本で緊急事態宣言の自粛により、一時は相当数まで感染者がへりました。その時間のあいだに法整備をして、十分な検査の拡充と、濃厚接触者の追跡と隔離が出来るような改定を経ていれば、そのまま1ヶ月ほどすればグリーン国の仲間入りできていたはずです。国内の旅行は復活し、新しい生活様式を取り入れる必要もなく、経済ダメージは最小化し、国民の不安も消えてなくなっていたことでしょう。
しかしながら、日本においては、法整備はされず、またクラスタ追跡班の人員も大幅に拡充されたとはきいていません。韓国のようにGPSでの追跡などできず、FAXと紙で竹槍するにしてもクラスタ班に数千人の捜査員を拡充すれば対応できてたかもしれません。
法整備もクラスタ班の拡充もしなかったというのは、封じ込め路線は取らないという日本の政府の明確な意志な表れとおもいます。
日本としては、現状の制度を1ミリも変えない範囲でできるだけのことはやったということでしょうし、その範囲では、最大限の効果をだしたとおもいます。
しかし、やはり検査・追跡・隔離の実効性がなければ、いずれまた感染者は拡大してしまうのであり、そのときに再び緊急事態宣言が出せるとはわたしには到底おもえません。前回ですら経済に配慮して早期解除したのですから、第二派においては、なんとか言い訳をつけて緊急事態宣言を出さないようにするはずです。緊急事態宣言という伝家の宝刀は1回しかつかえないのです。
最初の宣言のときに、法整備(隔離を要請でなく義務化)とクラスタ班の拡充をすべきだったと私は常々主張してきましたが、そうはならなかったので、封じ込めの最初にして最後のチャンスを失いました。今から、再び緊急事態宣言をして、封じ込めを目指すというのは、私からみても現実性がないように思えます。
ですので、私は、もう日本においては、提言すべきことはあまりなくなりました。よって、日本に関しては、批評をするのではなく、グリーンゾーン居住(ベトナム)という私の立場から、観察記録的なものを記していくという方針にこれからは変えようとおもいます。
ということで、以下は皮肉も込めた、観察になります。
日本ですが、これからはなるようにしかならないとおもいます。日本の得意技の時間稼ぎがいまのところ上手く言っています。感染者はじわじわふえていますが、感染爆発には至ってませんし、経済も、みんなビクビクしながらもなんとかやっています。社会システムも、社会体制も、1ミリも変えずにすみました。すべては日本の個人にしわ寄せを寄せることによって、精神力でなんとかしているので、まさに日本にふさわしく、日本でしかできない見事な解決法です。ただこの方法は疲れます。もうみなさん疲れてますよね。
さて、イタリアで妙なことがおきているという観察も有り、コロナにかんしては時間が味方をするのは確かです。数カ月単位でいろいろ起きており、当初かんがえていた数年というタイムスパンよりも早く変化がおきているようにおもいます。これは日本の時間稼ぎ戦略においては、有利に働くファクターです。
最近ファクターXという言葉がはやっています。政府としてはこう頼むことになります。
「国民のみなさん、グラフをみてください。日本では、外国より人が死なないという話もありますし、日本人は免疫的にコロナに強いかもしれません。とにかく理由はわかりませんが、日本では大丈夫そうなんです。科学的に証明された証拠はありませんし、すぐに証明するのは無理なんです。
だから、いまのところダイジョブだし、今後もだいじょうぶだろうと信じで、みなさん普通にいきましょう。
たぶん、大丈夫ですよ。
もし武漢みたいになったら?第二派がきたら?心配しないでください。たぶんなりません。理由は?うん、その、解明できてない何かですが、それは解明できません。でも、たぶん大丈夫なんですよ。
ですから、しばらくこのままダラダラやりましょうよ。そしたら何か変わるかも知れないし、海外の学者がスゴイものをみつけてくれるかもしれません。
万が一、万が一、武漢みたいになったら、謝りますから。」
ということです。そして、おそらくそれが日本にとっての最適解でしょう。たぶん1年くらいうだうだやっている間に、いろいろなことが判明して、対処ができるようになるでしょうし、あわよくば勝手にコロナがいなくなるかも知れません。
ファクターXの内容を、科学的に十分な証拠をもって言い切るには相当の時間がかかるとおもいます。いままで想定されていないような作用がはたらいているわけで、さらに複合要因が絡み合っているとすると、これを完全に実証するには10年くらいの精密な実証が必要で、ノーベル生理学賞レベルの研究課題です。
仮にファクターXが正しければ、その科学的な機序が完全解明されるまでにあいだに、ファクターXによってコロナが先に結果オーライになっていることでしょう。ですから、矛盾のようですが、ファクターXは自体は解明することができなくなります。
ファクターXがあると仮定すると、ファクターXの存在は、ファクターXのおかげで解明できなくなる。まるで、数学の言明のようです。(ゲーテル不完全性定理ですね)
ということで、ファクターXは、現時点では、信仰の問題になります。信じても、信じなくても、来たるべき未来の結果は一緒ですが、信じたほうが、気が楽になるかもしれません。
これは神を信じるべきかかという問題を功利主義的に解いた話ににています。もし天国が存在するなら、神を信じておけば天国にいけますし、もし天国がない場合においては、神を信じても信じなくても死後は一緒です。とかんがえると、効用を最大化するには、死にそうになったら改宗して神を信じたほうがお得になります。(神を信じてないと、死後の世界があった場合地獄におちます)。
これと一緒で、特に日本でなにかできる対策がこれ以上あるわけでもないとおもいますし、もう、なるようにしかならないでしょう。仮に天国と同じにようにファクターXが存在するならば、ファクターXによって対策しようがしなかろうが、勝手に終息しはじめる(イタリア)になるでしょうし、日本人はそもそもコロナで死なないということになります。
このとき、ファクターXを信じるか信じないかでいえば、日本居住者個人における最適解は、ファクターXを信じて、自信をもって日々を過ごすということになります。
グリーン国からは以上です。
P.S 信じるが最適解ですが、宗教と同様で他人に強制したり、信じてないひとを馬鹿にしたり中傷すると喧嘩になりますから、やめましょうね。信じない人にも敬意を払い、不遜な態度は慎みましょう。
(追記)
本文は皮肉めいて面白おかしく書きましたので、趣旨が捉えにくいかもしれません。以下は真面目にかきます。
多くのひとが勘違いしているようですが、私自身はファクターXの存在を始めから否定していません。ただ、ファクターXが完全に特定されて証明されているわけではないという考えでした。
日本には封じ込めチャンスがあったので、ファクターXの有無にかかわらず、其の時に封じ込めたほうが経済・命の双方から考えて、最もコストがやすかっただろうというのが、私の主張でした。
封じ込めに際しては、再三書いているように、有効な法制度(検査・追跡・隔離)が必要です。緊急事態宣言と同時にこれらの整備、すくなくとも接触者隔離の実効化を期待しましたが、そうはなりませんでした。最初にして最後のチャンスは過ぎました。
ですので、私は、現状況において、日本で封じ込めを目指すべきとは思っていません。また、再度の緊急事態宣言宣言も、有害です。有効な法体制のないまま、封じ込めを目指すのは不可能で、それは無限のロックダウンが必要となり、意味がありません。また解除すれば感染者はぶり返すだけで、単なる一時しのぎのためにやるべきではありません。
現在の日本の状況では共生路線を続けるほかなく、それを上手くやってほしいと思います。そのなかで、日本特有のファクターXが有利にはたらき人々の命が救われれば、それほどうれしいことはございません。ファクターXの存在を心より願っています。
ですので、誰とも反目している点は無いことをご理解いただけるとおもいます。