新型コロナ、今後のシナリオ(サトウヒロシ)

サトウヒロシ
9 min readMar 30, 2020

世界の状況を俯瞰しまして、今後のシナリオをまとめます。現在の状況からの論理的・演繹的な帰結です。いずれも今手に入るWHOや都市別の感染状況などを基にしており、特殊な仮説は置いておりません。Twitterで初期から繰り返し言ってきたことも含まれますが、確認のためにもご一読ください。

世界中のロックダウンはいつまで続くのか?

まず、関心事の中心の都市封鎖がいつまでつづくかですが、皆さんが考えているより長くつづきます。すでにロンドンでは6月まで続く[1]という話も報道されています。欧米各地ですでに武漢より状況が悪く、また武漢より徹底した対策が取れてないことからも、更に長引くことは自明です。極めて楽観的にみて夏まで、対応が遅かった地域は今年いっぱいまでかかってもおかしくありません。

ロックダウンはいつ解除されるかですが、武漢を目安とすれば、市中の新規の感染者がゼロになったときです[3]。※管理できている感染(国外からの輸入ケースで隔離済み)は含みません。

なぜそこまでロックダウンが続くと言えるのかですが、途中で緩めた場合に、いずれ第2波となり[2]、再度都市封鎖になる可能性があるからです。施政者はコロナをコントロールして、経済とのバランスと取りつつ低レベルで保つということは難しいことに気づき始めています。チャレンジはできますが、あまりにリスキーです。都市封鎖のような悲劇的な事態は二度と起こしたくないはずです。絶対に、絶対に、一度ですませたいはずです。ですから、収束=市中感染者がほぼゼロになるまで手をゆるめたりはしません。中途半端で終わせることが最大のリスクです。これは施政者なら間違いなくそう考えるでしょう。

都市封鎖解除後ですが、それでもクラスタをつくらない対策はつづきます。つまり3条件(気密性、多数が至近距離、会話をともなう)にかかるビジネスは、引き続き制限を受け続けるでしょう。ロックダウンがおわったら営業を再開できるという見通しは甘いです。クルーズ船ビジネスは無くなり、クラブやライブは廃墟になります。もちろんそれで生活できなくなる人は出てきますが、保証金の間に別の仕事をみつけてくださいというメッセージになるでしょう。

同時に、厳格な追跡や検査体制も拡充されるでしょう。疑わしいひとの検査と追跡、市中で体温計が常に人を見張っている、隔離の監視やGPS装着など、封鎖を伴わない施策は引き続き実行され、むしろ厳格化します。

レッドゾーン、グリーン・ゾーン、DMZビジネス

都市封鎖から回復したところは、コロナを他から輸入しないように、国境なり州境を閉じます。つまり鎖国です。検疫体制は厳しくなり、域外から入るには、PCR検査にくわえて14日間の隔離が標準的な条件になるでしょう。世界を簡単に行き来できる時代はおわり、旅行は過去の遺物になります。卒業旅行は諦めてください。インバウンドは全てなくなります。全てです。

ただし、コロナから回復した国や地域どうしは、検査体制のレベルを統一したうえで、移動の制限をゆるくする可能性があります。これがグリーン・ゾーンです。要するにEUが国境をなくしたようなもので、何処かのグリーン・ゾーンに14日の隔離を経て入った後は、その中での移動はわりあい自由になるということです。

まずは中国・香港・マカオ・台湾・シンガポールの中華連合のなかでこれが実現するでしょう。

レッドゾーン、グリーン・ゾーンの中間地帯としてDMZが設置されます。ここは14日の検疫をうけるゾーンです。観光地はDMZに転用され、リゾートに滞在しながら14日過ごすこともできるようになります。14日の連泊客は超上客です。観光業は機転をきかせてDMZに舵をきれば、収益率が大幅にあがります[4]。後ろをみるのではなく、前をみましょう。

空港はレッドゾーン客を迎えるために、構造の改造が必要になります。現在の空港はダイヤモンド・プリンセス号と同様、ゾーン分けがされていません。空港でのゾーン分けは重要な施策です。

こうした施策がうたれたのちに、14日間の隔離の後、人の移動は復活するでしょう。当然14日間隔離されてまで移動するというのはコストが高いですから、普通のひとはやりませんが、どうしても移動の必要がある人もいますから、そうしたひと向けに国際移動の際のプロトコルを統一しておく必要があるでしょう。

民間の航空会社の殆どはいったん倒産(国営化)します。LCCはほぼなくなります。航空機はチャーター便が主流になるでしょう。

海外出張?そんなのはなくなります。G7ですらWeb会議でできるのですから。表敬訪問するのに14日の隔離をうけますか?海外に行く人は、基本的に現地で1年以上の業務に着く人だけです。

オリンピックについてはあんまり書きたくないですが(ノイズが多くなるので)、来年の延期プランも無理でしょう。中止になります。世界中から人がやってくるイベントはもう無いでしょう。もちろん東京でコロナ再燃を許すなら可能ですので、東京の意思決定次第ですが・・。

出口戦略について

さて、その後の出口戦略はどうなるでしょうか。

まず集団免疫をつけるという戦略は、もうありません。議論もされてません。イタリアは感染者10万人の死者1万人になっていますが、これでも6000万人の国民の0.17%が罹患しただけです。これを集団免疫がえられるとされている30〜60%に持っていく間に、何度都市封鎖を行い、何度医療を崩壊させる必要があるでしょうか?それだけ考えてもオプションから外れます。

もちろん結果として、集団免疫が達成される地域もあるでしょう。途上国で何らの対策も政府が打てず、住民も何も従わない場合、大量の屍のあと、ウイルスにその地域が負けます。敗北の結果、集団免疫が達成されます。これはあくまで結果です。敗北の結果が集団免疫なのです。逆ではありません。文明がない場所、文明を放棄した場所でのみ、裸の集団免疫が達成されます。

そうしている間にも、グリーン・ゾーン以外では、コロナが再発したり、爆発したり、殺しあいが起きているかもしれませんが、それは第三世界、文明の枠外の話として、もう無視されます。先進国であれば、自国をなんとかして浄化し、体制を整えて、グリーン・ゾーンに加わるようにするしか道は無いのです。

となると、考えれる出口戦略は1つだけです。都市封鎖などでグリーンな状態にもっていった地域は、厳格な国境管理で鎖国をし、追跡・検査体制を整えたのち、制限化において経済活動をまわすしかありません。そして、ワクチンの登場まで待つということです。

ともあれ、ワクチンが作られれば、それを多くのひとが摂取することで、集団免疫になります。最も楽観的な出口はそれになります。つまり、最終的に疫病は集団免疫のみによって乗り越えられるという学者の意見は正しいのですが、みなさん誤解している点は、それは裸のノーガードで屍の上に気づいた集団免疫ではなく、ワクチンによるものなのです。

なお、ワクチン後も、まだコロナはあり続けるとおもいますし、局地的な流行はあるかもしれません。このように書くと、ウイルスは根絶されてないし、ウイルスとの共生策じゃないか、以前の私の主張と矛盾しているじゃないかという人もいるかもしれません。私があり得ないといっている共生論は、人類にワクチンも免疫もない状態でノーガードで共生する(集団免疫を得る)というものです。ワクチン後に共生するというのは、今の多くの感染症と同様でしょう。

有効なワクチンが開発されるまでは1年半は楽観的すぎる気がします。私はそのあたりの知見はないので、勘でしかなく、何も言えませんが、3年、5年という長期になる可能性もあります。過去にSARSやMERSや風邪といった他のコロナウイルスに効くワクチンは開発されたことがありません。インフルエンザワクチンのように確実には防げないような感じのものしか作れない可能性は十分あります。コロナの抗体は確かにできるものの、持続時間が短く、数カ月で消えてしまう可能性もあります。調査がされていないので何も分かりませんが、完璧なワクチンが短期間で開発されることに、あなたの全てを賭けてはいけません。

まとめと、結論

まとめます。

・都市封鎖は夏までつづく。収束させるまで続く。収束させた地域は鎖国する。
・収束した地域はグリーン・ゾーンになるが、活動制限は続く
・グリーン・ゾーンの中ですら3条件ビジネスは消える
・中華圏のグリーン・ゾーンが最初に出現するだろう
・ワクチンの登場までこの状態が数年〜長期続く
・人々は、この新しい世界に適応する必要がある

以上です。なお、コロナにおいては日々新しい状況が発生しています。前提がかわれば、シナリオも修正する必要がでてきますので、その際には、またブログで投稿します。

最後に。

世界や経済活動が、すぐに元に戻ることを期待してはいけませんし、施政者にそれを求めてもいけません。人々はこの新しい世界に馴れる必要が有ります。適応する必要が有ります。

(注記)当方は投資家です。医学・免疫学の専門知識はございません。当方が強いのは、ビジネス、世界情勢への予想シナリオであり、つまり投資をする際のベースとなる未来シナリオを考えることです。BCG云々や、弱毒株、S型L型といった、ウイルスそのものの特性に関する話はするつもりはございませんため、コメント不要です。

[1]Finacial Times https://www.ft.com/content/4ac1266a-436d-3128-b068-2d68ddc1485c
[2]Relaxing coronavirus restrictions too soon could backfire.
[3]ロイター「中国、新型コロナ新規感染の減少続く 湖北省では6日連続でゼロ」
[4]FEEL JAPAN、コロナ対策の14日間拘束で悲鳴を上げる帰国者に対して、滞在先の提供を開始

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