ワクチン、デルタ株後のコロナの見通しと、収束のシナリオについて

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長らくエントリを書いていませんでしたが、インド株とワクチンの登場でゲームがチェンジしましたので、状況と、見通しをまとめたく思います。

まず、前提として、第一に、デルタ株(インド株)の感染力が非常に高いということです。いままで、封じ込めに成功してきた国、香港・台湾やベトナム、NZなどにも侵入しはじめています。デルタ株の感染力は高く、社会的隔離の状態でR=4、裸の状態ではR=7という報告もあります[1]。また空気感染も確認されており、麻疹並の感染力といえるでしょう。これを封じ込めることは、もはや不可能で時間の問題です。封じ込めが不可能になった。これは大きなルールチェンジです。

しかし、幸いなことに、ワクチンが登場しました。封じ込めというのは、そもそも論ですが、ワクチンなり治療薬が開発されるまで時間を稼ぎ、命を守るものでした。いまやワクチンが開発されたのですから、解決策はワクチン一択になります。押さえ込めている間にワクチンで集団免疫を獲得し、その後、開国することができれば、封じ込め戦略の完全勝利です。
しかしながら、皮肉なことも起きています。封じ込めに成功している国はワクチン調達に難航しているのです。感染が広がってないのだからという理由で後回しにされており、また国民も感染が制御されているのだからといってワクチンを打つインセンティブに欠けています。しかし、その間にデルタ株が広がればどうなるか。大逆転負けも考えられます。

さて、日本の状況はどうでしょうか。幸いなことに、日本は性能のよいワクチンを国民全員分確保するという、ファインプレーをしました。コロナ政策においてはぐだぐだの日本でしたが、このプレイだけは超ファインプレーであると褒めてもよいでしょう。つぎに接種状況ということになりますが、デルタ株の広がりとワクチン接種率の競争において、若干ながらワクチンのほうが先行できていると言えましょう。いまのところなんとか押さえられています。

今後の見通しをかきます。

参考になるのはワクチン接種が先にすすんだ国の状況です。

ワクチンの接種率は米国、英国をみても5−60%で止まっています。さまざまな推奨策をおこなっているにもかかわらず、伸びていません。デルタ株のRの大きさを考えると集団免疫が獲得できる率(仮に85%)には及びません。どうしてもワクチンを嫌うひとが一定数いるのと、重症化しないだろうと考える若年層が接種しないからです。

任意接種である以上ワクチン接種率が今後すぐに、80%、90%という数字になることは考えにくいです。それ以前に社会的隔離は緩和されて、経済のスタートが先になるでしょう。集団免疫に至らないのに経済を再起動させるわけですから、ワクチン未接種のひとのあいだで感染はどんどん増えていきます。

実際に英国ではその推測が現実になってきています。

英国は社会的隔離を緩和しましたが、するとデルタ株が急速に広がりはじめたのです。いまや新規感染者の99%がデルタ株によるものになりました。具体的には、一時は2500人まで減った日時感染が、6月20現在で新規感染は1万人を超えており、指数関数的なグラフの伸びを示していまます。1万人は、今年の1月のピーク時の6分の1ですが、今回は厳格なロックダウンなどはおこなわれないでしょうから、一気に拡大し、6万人のピークを超えることも考えられます。(というより確実に思えます)

この再流行は、ワクチン未接種者のあいだで広がっていることがわかっています。下記がそのグラフです。未接種(赤グラフ)の間での感染がわずかに1ヶ月のあいだで急上昇。一方でワクチン2回接種のオレンジはなだらかです。現在の感染の広がりは、緩和を解かれた未接種層によるものなのです。

しかし、感染者数は重要なのではないという反論が聞こえてきそうです。これらの感染者は無症状であるか軽症で、命の危険はないだろうからです。現在のところ英国は医療崩壊にいたらず、重傷者や死者は減り続けています。このことから、感染者数は問題ないという反論も一理あります。

しかしながら、集団免疫に達さない状態で、感染者を増やすことには2つのリスクが有ります。

1つは、あらたな変異株の登場です。蔓延がつづくと、より感染力が高く、より重症化をしやすい変異が起こる可能性があります。そのとき若いひとのなかでも重症化事例がふえるかもしれません。

2つ目は、ワクチンを敬遠していた人の被弾リスクの増大です。これは決定的に重要な予想ですから、太字で書いておきます。社会的な制限がゆるくなったなかで、デルタ株が蔓延すると、もはや感染のリスクはかつてないほど高くなります。いくら感染に気をつけても、周りが普通に生活しているのですから、ウイルスがあなたのもとに、はやかれおそかれ、かならずやってくる事になるでしょう。

そのときあなたがワクチン未接種であっても20代ならば大丈夫かもしれません。しかしながら、基礎疾患があったり、中年以上なのにワクチン未接種であるとなると、かつてない高い確率で被弾・発症することになります。社会が普通に戻るにつれて、ワクチン未接種者の被弾確率が恐ろしい勢いで増えていくと考えられます。

その結果、ワクチン未接種の基礎疾患者・高齢者の重症例が伸びてきて、コロナのピークに近いくらいまで逼迫してくるでしょう。第5派です。
英国などでは、そうした時に死ぬべくひとは既に死んでしまいましたが、感染爆発がなかった日本では高リスク層もまだ生きています。もしこれらの高リスク層が、信条であれ、忘れていたのであれワクチンを打っていなければ、次はこれらの人がつぎつぎ重症化して、医療崩壊寸前、または初めての医療崩壊に至るでしょう。
重要なのでもう一度書きます。ワクチンを打ってないハイリスク層は、次の第5派で被弾し、重症化する確率が非常に高くなるでしょう。

最終的に、コロナはどのように決着するのかについて、最後にコメントします。

結局は、次の3つの要因が集団免疫に寄与します。

i. ワクチンをうったひと

ii. 若くて感染しして生き延びたひと人(ワクチン非接種者の若年層がほぼ100%罹患する。ただし無症状や軽症。)

iii. 死んだ人(母数から除外されるため)※欧米では既に死ぬべきひとはほとんどが死んでおり、日本ではワクチンを打たなかったひとがこれから死ぬでしょう。

この3要因で、いずれ集団免疫を達成するようになり、そのあたりで流行は収束します。

収束後もコロナは時折というか、常に世界のどこかで一定のサイクル集団発生するような病気として、だらだらとあり続けるでしょう。ただ、ワクチンと、若くて感染したひと、死んだ人、この3つのおかげで、その時点で生きているひとであれば十分な免疫を持っているひとたちであり、コロナにかかっても重症化は免れることになります。リスクが大幅に低下し、死亡者が伸びなくなった時点で、社会はそれを許容することになります。

しかしコロナは今後も消えることはなさそうなので、ときおり集団発生したりという感じになるでしょう。ワクチンは一回で一生効くという感じには思えませんから、おそらく数年ごとに打つということになりそうです(そして、ちゃんとワクチンしてれば重篤化することのない病気として克服されるでしょう)。そういう感じで、流行と収束を繰り返しながら、だらだら続くということになりそうです。およそ10年、20年くらいはそのようになるかとおもいます。

最後に。
おそらくここ数年かけて、社会的にはコロナは克服されますが、医療関係者はこれからも、数が多く厄介な疾患として、多くのコロナ患者の治療に当たり続けることになります。それは10年以上つづくでしょう。コロナ騒動が一段落ついても、そのことは忘れないようにしましょう。

サトウヒロシ

[1] Newsweek。英イングランド公衆衛生庁(PHE)の感染症担当スーザン・ホプキンス博士は6月16日、下院科学技術委員会でデルタ株の再生産数(R)は7に達する恐れがあると警告した。

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