海外進出とインバウンドが全滅するーアフターコロナの成長戦略はどこを狙うべきか?

サトウヒロシ
10 min readApr 6, 2020

コロナ後のビジネス環境についてさらなる考察を書きます。

さて、今の日本企業の成長戦略というのは、大きく分けて2つが主流になっています。

i. インドやASEANなどの成長国の消費市場をめざして、各国に「進出」していく戦略。
ii. 中国や欧米の富裕層などの消費をあてにした「インバウンド」戦略。

の2つです。「進出戦略」は、日本企業はここ20年推し進めていた基本路線であり、「インバウンド」は安倍政権肝いりの戦略だったことはみなさんもご存知ですよね。
いずれの戦略も日本の内需が、今後も右方さがりであるからという前提があります。そのため、外部に市場をもとめました。

このエントリでは、この2つの戦略のどちらもがアフターコロナでは、悲しくも木っ端微塵に弾け飛んでしまうという話をします。そして、どのようなビジネスで成長を描くべきかという示唆について触れます。

☆以前のエントリ「新型コロナー今後のシナリオ」を読んでないかたは一読ください。グリーン・ゾーン、レッドゾーン等の基本的シナリオを理解しておく必要が有ります。

「海外進出」で成長できなくなる理由

もういちど進出戦略について概要を述べます。いま世界で消費が伸びているのは新興国です。中国はもちろんのこと、インドや、インドネシア、ベトナムといったアジア諸国、ブラジルやアフリカ諸国といったところにも目をむけると成長している市場があります。これらのかつての途上国の国民が豊かになり中間層が形成され、家や車、娯楽やIT機器・家電といったものを買うようになります。

これらの消費をねらって、現地に支社をもうけ、工場や流通網を整備し、直接彼らに物を売っていくというのが「進出」戦略の概要です。トヨタなどはご存知のとおりで、ユニクロや良品計画といった小売業でも海外進出は戦略の柱で、売上の多くを担っています。こうした大企業でなくても、途上国に日本食レストランやラーメン屋を開いたりといった小さいレベルでの進出もかつて無い規模で広がりました。

こうした進出は、どう考えても厳しくなります。

国際的な行き来は煩雑になり、ちょっと出張や市場の視察のために海外に行ってくる、というようなことはできなくなります。表敬訪問や視察に14日の隔離はしんどいです。相手も海外からきた人に気軽に会いたくありません。短期の商用出張というのは死語になります。

すでに進出ずみの企業が現地の経営を維持するというのは有りにしても、いまから進出するのはもう無理でしょう。

こうした進出によって成長戦略を描いていた企業は、大きなハードシップに直面することになります。ベンチャー企業も多くが海外進出による市場拡大戦略を基本としているため、それができなくなると成長シナリオに疑問がつきはじめます。まだ株価には織り込まれていませんが、いずれ大半の企業の成長性に疑問符がつき、PERの見直しに繋がるでしょう。

インバウンドはゼロになる

インバウンドについては、もう説明するまでもありません。ゼロになります。ゼロです。短期の観光というものがしばらくほぼなくなるでしょうから、インバウンドという概念が成立しません。

カジノや展示場といったいわゆるMICEモデルも戦略を修正するほかなくなるとおもいます。オリンピックも同様で、政府としてはなんとしてもやりたいでしょうが、その性質上、できればやりたくないタイプのイベントであることは確かです。

サッカーやラグビーのワールドカップといった、世界中から選手だけでなく、観客も呼びこむ形のビジネスは辛いです。もちろんその利権の大きさから開催は強行されることになるでしょうが、ホスト国がその後どのような影響があるかは、やってみないと分かりません。

F1など、世界を転々とするものの、チームだけが移動して、観客は現地の人であるというタイプのものはまだ成立するかもしれません。

ですからスポーツは、国内リーグが中心になります。となると結局内需の弱さが露呈します。

内需が更にしぼむ理由

もともと海外進出、インバウンドのどちらも、日本国内の内需が長期的に右肩下がりであるという前提がありました。そして、コロナのあとの内需はどうなるかというと、更に右肩下がりに拍車をかけるでしょう。内需はボロボロになります。

要するに、海外進出、インバウンド、少ない内需の取り合いという3つのシナリオがすべて木っ端微塵に砕け散るという、身も蓋もないというか、まったく希望が見いだせない状況になる可能性があるということです。

成長分野はどこにあるか?

となると成長分野はどこにあるのでしょうか?

まず成長分野ではないものの、縮小を避けられる領域についてはなします。

第一に、外資撤退後の隙間です。

日本企業が海外進出から撤退するということは、同様に外資系企業も日本市場から撤退するということでもあります。そうなると競争が緩和され、撤退した分のパイは、日本企業の間でわけることになります。隙間狙いということになりますが、ここで勝つことは必要でしょう。

次は、いわゆる地産地消やニッチです。これは成長しずらいのでむしろ撤退戦略かもしれません。規模を徹底的に縮小し、ニッチになることで生き残りをはかります。

最後は、コロナ後のライフスタイルシフトによって恩恵をうける産業です。いわゆる引きこもり需要、ゲームやコンテンツといった産業は需要自体がのびるかもしれません。健康食品や、家庭でできるフィットネスといったものも需要が伸びるかもしれません。いずれもコロナ需要にあわせて、消費が伸びる分野というのはあるでしょう。

さてこうしたことはあるにしても、結局のところ国内の総需要は下火です。マクロで見ると大きく成長できる分野はどこになるかというと、結局は2つに絞られます。もうこれは、身も蓋もない話で、GAFAなどのグローバルITサービスと、古典的な輸出産業ということになりそうです。

日本に本拠をおきながらGAFAのような場所を選ばないサービスを展開し、世界中から売上を上げられるというのはアフターコロナの時代の理想像です。当然日本もこうした産業形態にはトライしてきましたが、人材の質、規制、労働市場の流動性、税制など、さまざまな要因がGAFA的なビジネスには向いておらず、結局実現には至っていません。今後も難しいように思います。

次は、古典的な製造業への回帰です。工場を戻し、雇用を戻し、まだ通用する分野で製造業で勝負するです。これをするにも、法人税率など、対処スべき問題点はいろいろあります。

製造業では、結局中国と競争するわけです。中国のコスト優位性はまだしばらく続くでしょうが、日本人の賃金も大きく下がっているのでいずれかの時点では拮抗して勝負できるようになるかもしれません・・・

結局中国の一人勝ちの理由

結局のところ、アフターコロナは中国の一人勝ちです。(くわえてGAFA)。コロナを克服しグリーン・ゾーンで自由に経済活動ができ、さらに成長する圧倒的な内需市場がある中国は、さらにまだ戦えるコスト優位で古典的な輸出産業も好調です。コロナ克服・内需拡大・輸出好調と、死角が見えません。一部に過剰投資によるツケがあるとしても、今後の経済は中国の一人勝ちであることは誰でもできる簡単な予測になるでしょう。

中国で発生したコロナによって、中国の一人勝ちの時代がやってくるというのはなんとも皮肉な話です。

通貨安は既定路線

なお、日本も輸出型をめざし内需を刺激するための財政政策を繰り出すとなると、為替は円安誘導が明確にならざる得ません。世界的にも通貨安戦争が再びおこるでしょう。インフレになるかといわれるとそうではないとおもいますが、通貨でいえば、高ではなく安です。

このあたりの金融はわたしは専門といえるほど知識はないので、穴があるとおもいますので、この程度の考察にとどめます。

ハードシップ

結局ここまで書いて、実に見も蓋もなく、未来が見えない展望だなと思いました。中国以外の多くの国は長期にわたってハードシップを経験することになるでしょう。

今回のコロナをなんとか乗り越えても、次のウイルスが10年後、20年後に再びやってくるかもしれません。もうそういう想定で世界は準備をし始めます。このように、アフターコロナの世界では、事業環境が不可逆的に変化してしまいます。

多くの企業はこの現実を早期に直視して、事業戦略をゼロから見直すことが必須かとおもいます。

事業が生き残るためのヒント

長々とマクロの分析を書きました。マクロで見ると蓋もない話になりましたが、個別の事業なり個人レベルでいえば、できることはたくさんあります。生き残るためのヒントをいくつか書いて最後にします。

i. コロナ後のニーズに徹底的に合わせる。

たとえば飲食店なんかは、時間予約制にして、カーテンなどの仕切りをもうけ、他のグループと偶然の接触がおきないようにする。名簿管理し、事前に予約デポジットをとる。客を入れ替えるごとに消毒する。調理人はマスク帽子手袋着用、給食みたいにする。寿司職人はもう素手で握るのはNG。こうした対策があれば、優良店になれます。

ii. サービスの非対面化

思っている以上のサービスが非対面で実施できます。コンサルティングサービスなんかはそうですし、料理教室も、ヨガもできます。ライブハウスだって、Youtube配信スタジオにむしろ改造してしまえばよいです。

私自信は、国外居住でそもそも日本のサービスは対面では購入できません。それでもたくさんのサービスを日本から購入しています。いずれも、非対面でやってくれとリクエストしてやってもらっていますが、成立しています。トライしてないだけで、実はなんでもできるのです。

iii. 個人のグローバル化

マクロ環境はグローバルが後退するようにみえますが、個人はむしろもっともっとグローバルになります。非対面化を成し遂げたビジネスや個人は、市場が一気にグローバルに広がるからです。信じがたいことに、グローバルビジネスは加速するのです。売上は伸びるのです。

iv. デリバリー、半完成品、ノウハウの提供

アメリカの都市部の飲食店なんかはもう売上の半分がデリバリーだときいてます。地域差があるにしろ、そういう感じになってるわけですね。ですのでデリバリーへのシフトはやってみるべきでしょう。

そして、デリバリーといった完成品から、つぎは半完成品にしたほうがさらに市場もひろがります。つまり、家庭でちょっと料理すればできるようなものです。カレーのスパイスと調理セットだったり、オールインワンすき焼きセットだったり。シェイクするだけでよい、ミックス済みのカクテルなど。

すべて出来上がっているものはだめで、最後のひと手間、たとえばシェイクをするといったところを顧客に体験してもらうと面白いです。お客さんにシェイクの仕方をおしえて、ネットでバーをやってもいいわけです。

ノウハウは秘密にするのではなく、お客さんに提供すると良いです。

これ以外にもいろいろヒントはあるとおもいますので、おもいついたらまたツイッターなどで書こうと負います。みなさん負けないで、良い未来を作りましょう。

v. 不可逆的な変化、長期的な変化と捉える

ワクチンができたら元にもどると考えないほうがいいです。いつできるかわかりませんし、それにまた10年後20年後に進化したウイルスが戻ってくるかも知れません。不可逆的な変化と捉えて、一歩先に進むべきです。そもそも、非対面化などは、コロナ関係なくとも長期的に売上を伸ばす重要な手法です。

就活中の学生は、よくよく考えましょう。もちろんよく考えられるひとはもう就職する必要もないかもしれませんが・・

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