2020年の今に、コンサルを目指すというひとへの僅かながらのアドバイス(追記あり)

サトウヒロシ
7 min readJan 13, 2020

今はすっかりクリプトの人になってしまいましたが、私は新卒で某コンサル企業に入社して、そのあともコンサル業界とは長くかかわっていました。

コンサル業界を俯瞰した本がないので書いてくれと編集者にいわれ、いわゆる就職学生向けに、業界本を書きました。そのなかで、日本で初めて「総合コンサル」なるカテゴリを作りました。いま総合コンサルといっているのは私が語源になります。

その後も、コンサル人材むけのエクゼクティブサーチ事業を行うなど、業界の特色や人材などについてはプロフェッショナルを自負しています。

しかし、クリプトに転向してはや6年ほど。コンサル業界も様変わりしていて、もう僕がしっている業界とはだいぶ違うようになっているようです。

新卒で入った会社は某アクセンチュアです。先日、コンサルとはまったく関係ない趣味の話で、アクセンチュアのデジタルイノベーションセンターというところを訪れたのですが、完全にシリコンバレー風になっていて、まるで別の会社のようです。デジタル広告の運用チームなども居て、サイバーエージェントや博報堂と競合しているという話をきくと、時代はまるで変わったと感じました。

私がジュニアコンサルタントだったときに配属されたプロジェクトでマネージャーだったかたが、今や社長になり、業績は絶好調のようです。なんでもデジタル関連の事業や案件が全体の4割をしめているのだとか。

つまり、アクセンチュア自身が、デジタルへの変身をうまく成し遂げたのだと言えます。一時期、コンサルという仕事は終わったといわれることもありましたが、アクセンチュアは見事に業績を伸ばしております。流石としかいいようがありません。

アクセンチュアはブランドキャンペーンをよくやっているのですが、当時の私にはピンとこないものばかりでした。

たとえば、「High performance. Deliveredーハイパフォーマンスの実現へ」とか。意味がわからんとおもいました。コンサルっぽくないじゃん。

しかし、今になってみると、実に時代の先をよんだスローガンだとおもいます。結局、デジタルで組織や業務を変革し、組織すべてにわたるパフォーマンスを向上させていくというのがここ20年の大きなテーマだったからです。つまりデジタルトランスフォーメーションです。一貫してそれがテーマだったのです。今になったらわかりました。

それに乗り遅れたいわゆるお硬い戦略系のコンサル会社のほうがオワコン化してしまった。アクセンチュアは、業務アウトソースや、デジタル広告の運用などが増え、よい意味でコンサル企業でもなんでもなく、BtoBソリューションの総合デパートみたいな感じになってます。

今後も、いろんな技術をつかって、組織をトランスフォーメーションしていくという仕事は、なくならないでしょう。むかしは、使えるツールというとERP一辺倒でしたが、いまは、AIやビッグデータ、Saas/Paas/IaaS、ブロックチェーン、IoTなど、使えるデジタルツールの幅が山盛り増えました。こうした技術の基礎素養を持ち、ビジネスとの接点のセンスを兼ね備え、実装・実行もできるという人材は、これからの時代もスター選手になれるでしょう。(こういう人材をデジタルトランスフォーメーション人材とよびましょう)。

さて、すこしだけキャリア形成としてのアドバイスをします。

時代が求める人材像は先程かきました。これができればスター選手です。こういう選手になるには、どうやっても基礎的なテクノロジの素養や能力が必要とおもいます。

従来のITコンサルは、文系の人を多く採用し、どちらかというと業務寄りで、仕様だけ作ってシステム開発会社に丸投げみたいなプレイも多かったと思います。デジタルトランスフォーメーション人材は、自分で手を動かして物が作れないことにはどうしようもありませんから、なんでもいいですから、自分でできることを増やしておく必要が有ります。

平たく言うとプログラミングですが、単にプログラミングが大事というと曲解される可能性があるので、できればそう書きたくありません。このあたりのニュアンスは難しいのですが、書かれた仕様をプログラムに落とすプログラミングではありません。新しい仕組みを作ろうとするとき、まだ世の中で提供されてない部分がどうしてもあるので、その隙間を自分でさっさとコードなりを書いて埋めることで前にすすむ、実現させる、というような能力です。デジタル分野では技術が自分にないとギャップを埋めようがありませんので。そこが従来と決定的に違うところです。

知識の深い技術分野は1つあれば十分。業界や業務知識に精通すると発想の幅が広がります。が、業務知識などは、3年もその業界にいれば普通に精通するので、はじめは要らないとおもいます。

論理思考力は必要ですが、MBA的なフレームワークを使えるようにするとかではありません。議論がまともにできたり、論理が飛ばないとか、そういうレベルでよいです。というかそれってビジネスマンの基礎素養です。

さて、以上のスキルがコンサル業界にいると身につくかということですが、それはなんとも言えません(論理力は鍛えられます)。むしろ、そういう素養があるひとが、コンサルでも、ベンチャーでも活躍できるという一方向の関係になっている可能性も否定できません。

なお技術が大事と言っても、いわゆる「技術屋さん」は評価されません。先端技術のデモンストレーションがゴールになりがちなので、気をつけましょう。あくまでで価値があるのは、B to Bであればコストを下げ売上をあげることであり、B to Cで言えば、ユーザーにメリットや付加価値を感じてもらうことです。これはあまりに基礎的過ぎてわざわざ書くかどうか迷いましたが、技術が大事というと起こりやすい勘違いなので、あえて書きました。

最後に文系MBA人材は、もう役に立たないので、自己満足だと思ったほうがよいでしょう。

※追記

古典的な戦略コンサルは斜陽産業です。私は戦略部門におりましたので、事情はよくわかります。

昔は戦略コンサルがエリートで、ITコンサルは土方といわれていました。酷い話ですが、そういう階級意識があったのです(いまでもコンサル志望の学生とかはそういう意識です)。

しかし、いまとなっては戦略コンサルは顧客に高いフィーを正当化できる要素があまりなくなりました。リーマンショック後は投資ファンドの下請けとして投資先のデューデリ請負で食いつないだという涙ながらのエピソードもあります。現在の仕事を聞くところによると、変革のお手伝いといえば聞こえがいいですが、お客さんの社内プロジェクトのサポート仕事がメインになってます。しかしITが使えませんから、手法は「何でも屋」です。要は高級派遣社員みたいな付加価値になってます。これぞ本当の土方です。

とはいえ、ITコンサル領域も、相当の割合でデスマーチな従来の開発プロジェクトも混ざっていますし、結論をいうと、どちらも土方には変わりないということになるのでしょうか。それからシリコンバレーエンジニアは給与が激増しているのに、ITコンサルの給与は昔から水準が変わってないいことからも察しですね。

最後に余計なことを書きました。すんません。

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